ふたつ名の令嬢と龍の託宣
「あの、さすがにこれは……」
助けを求めるようにジークヴァルトを見るが、無言でスプーンを突き付けてくる。
思わず壁際へと視線を向けると、エッカルトの期待に満ちた瞳にぶつかった。その顔は『 あ ー ん は い ち に ち い っ か い ま で 』と言っているようで、リーゼロッテはここには助けてくれる人間はひとりもいないのだと瞬時に悟った。
(一度だけなら……)
あーんのノルマは一日一回だ。覚悟を決めたリーゼロッテは目をつぶって小さな口を開いた。そっと唇にスプーンがあてられたかと思うと、ゆっくりとスープが流し込まれてくる。
悔しいことにものすごくおいしい。なめらかな舌触り。鼻腔をくすぐる馥郁たる香り。絶妙な塩加減に食欲をそそられてもう一口欲しくなる。
今日のノルマを達成してほっとしているところに、追い打ちをかけるように再びスープが差し出された。
「あーん」
「え? いいえ、今日はもうあーんはお終いですわ」
「昨日の分だ」
「ええ!?」
目を白黒させているうちに二回目のあーんを受け入れてしまった。
「その前日もその前も、ノルマが達成できなかった。今日は今までの分、すべて取り返すから覚悟しろ」
そう言って、ジークヴァルトは久々に魔王の笑みをその口元にのせた。
(ぜっったいにおもしろがってる!!!)
そう思ってもリーゼロッテに拒否権は与えられることはなく、食後のデザートまで続けられたあーんによって、順調にガリガリHPを削られまくったのであった。
助けを求めるようにジークヴァルトを見るが、無言でスプーンを突き付けてくる。
思わず壁際へと視線を向けると、エッカルトの期待に満ちた瞳にぶつかった。その顔は『 あ ー ん は い ち に ち い っ か い ま で 』と言っているようで、リーゼロッテはここには助けてくれる人間はひとりもいないのだと瞬時に悟った。
(一度だけなら……)
あーんのノルマは一日一回だ。覚悟を決めたリーゼロッテは目をつぶって小さな口を開いた。そっと唇にスプーンがあてられたかと思うと、ゆっくりとスープが流し込まれてくる。
悔しいことにものすごくおいしい。なめらかな舌触り。鼻腔をくすぐる馥郁たる香り。絶妙な塩加減に食欲をそそられてもう一口欲しくなる。
今日のノルマを達成してほっとしているところに、追い打ちをかけるように再びスープが差し出された。
「あーん」
「え? いいえ、今日はもうあーんはお終いですわ」
「昨日の分だ」
「ええ!?」
目を白黒させているうちに二回目のあーんを受け入れてしまった。
「その前日もその前も、ノルマが達成できなかった。今日は今までの分、すべて取り返すから覚悟しろ」
そう言って、ジークヴァルトは久々に魔王の笑みをその口元にのせた。
(ぜっったいにおもしろがってる!!!)
そう思ってもリーゼロッテに拒否権は与えられることはなく、食後のデザートまで続けられたあーんによって、順調にガリガリHPを削られまくったのであった。