ふたつ名の令嬢と龍の託宣
 先ほどのリーゼロッテの反応を見るからに、ジークヴァルトが直接見せたところで、オクタヴィアの瞳を前にリーゼロッテが固まったあと、すまなそうな顔をするのがおちだろう。

「そんなことはわかっておりますよ! ささやかな夢を見るくらい、許されてもいいではないですか!」

 ハンカチを取り出して目に当てているマテアスは、どことなく父親のエッカルトに似ている。リーゼロッテはそう思って、マテアスの顔を(なぐさ)めるようにのぞき込んだ。

「マテアス……わたくし、ジークヴァルト様にあとでちゃんお礼を言うわ……だから泣かないで……ね?」

 気づかわし気な上目遣(うわめづか)いのリーゼロッテを前にして、マテアスはくっと目頭(めがしら)に手を当てた。

「ですからそのようなお顔は、ぜひとも旦那様に……」

 そんなやり取りを前に、ジークヴァルトも甘やかされすぎだと、アデライーデはあきれたように大げさなため息をついた。

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