ふたつ名の令嬢と龍の託宣

【第7話 矛盾の果て】

「ねえねえ、聞いた? 昨日、王城からいらしてた騎士様の話」
「聞いた聞いた! なんでもその騎士様とリーゼロッテ様が、すごく親密そうにされていたって!」
「もしかして浮気?」
「もしかして浮気!」
「え? なにそれ、あたし知らない!」

「しかもその騎士様は、エマニュエル様にまで言い寄ってたらしくって!」
「何気に二股?」
「何気に二股!」
「ええ? 騎士様、守備範囲広すぎない!?」
「エマニュエル様って年齢不詳で色っぽいもんねー。その騎士様はまだ若そうで、旦那様よりは年下っぽいって話」

「年上にいろいろされたいお年頃とかぁ? だったらリーゼロッテ様に手を出さないでよって感じ!」
「うんうん、言えてる! 旦那様の恋路を邪魔するなんて、騎士の風上(かざかみ)にも置けないって感じ!」
「チャラ男反対!」
「チャラ男撲滅(ぼくめつ)!」
「そうよ! 旦那様だってチャラい騎士なんかに負けてないんだから! 夕べだって、おふたりで仲睦まじくお食事なさったって話だし」

「あたし、配膳係(はいぜんがかり)にまぎれて、おふたりの晩餐(ばんさん)、のぞき見しちゃった!」
「ええ!? ずるいぃ、わたしも見たかった!!」
「旦那様がね、リーゼロッテ様のお世話を甲斐甲斐(かいがい)しくされて……あれはきっと、騎士様への嫉妬ね」
「嫉妬?」
「旦那様が嫉妬!」

「もしかしたら、それがリーゼロッテ様の狙いかも」
「狙い?」
「旦那様に焼きもちを焼かせる作戦よ」
「リーゼロッテ様、小悪魔!」
「めっちゃ小悪魔!」
 
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