ふたつ名の令嬢と龍の託宣
【第8話 龍の目隠し】
晩餐後の紅茶を差し出されながら、リーゼロッテは満足げに小さく息をついた。
昨夜に続けて、今夜もジークヴァルトと晩餐を共にした。しかしこの日は、自分の手で公爵家のフルコースを堪能することができたのだ。それもひとえにアデライーデがいてくれたからだ。
アデライーデは仰々しい晩餐の席を目にすると、猛烈にダメ出しをして、もっと気軽に食事を楽しめる席を別の部屋に用意させた。
リーゼロッテはアデライーデの隣の席に座り、ジークヴァルトはその向かいの席についたため、それなりに大きなテーブルは、ジークヴァルトにあーんをする隙を与えることはなかった。
自分のペースで最高級の料理を食せたし、アデライーデとの会話も弾み、心もお腹も大満足だ。
食事の給仕もマテアスだけが務め、夕べのように入れ替わり立ち代わりでやってくる使用人たちの、なんとも生暖かい視線にさらされることもなかった。
ジークヴァルトは聞かれた質問に答えるくらいで晩餐中はほぼ無言だったが、マテアスは始終不満げな顔をアデライーデに向けていたので、もしもアデライーデが言い出さなかったら、昨夜の悲劇を繰り返す気満々だったのだろう。
そう思うとリーゼロッテはひたすらアデライーデに感謝の念を抱いた。
「どう? リーゼロッテは満足できた?」
「はい、どのお料理もおいしくて、少し食べ過ぎてしまいましたわ」
「リーゼロッテはもっと食べていいと思うけど」
リーゼロッテの小さな顎のラインを指先でくすぐりながら、アデライーデはちらりとジークヴァルトに視線を向けた。
(くくっ、睨んでる、睨んでるわ)
昨夜に続けて、今夜もジークヴァルトと晩餐を共にした。しかしこの日は、自分の手で公爵家のフルコースを堪能することができたのだ。それもひとえにアデライーデがいてくれたからだ。
アデライーデは仰々しい晩餐の席を目にすると、猛烈にダメ出しをして、もっと気軽に食事を楽しめる席を別の部屋に用意させた。
リーゼロッテはアデライーデの隣の席に座り、ジークヴァルトはその向かいの席についたため、それなりに大きなテーブルは、ジークヴァルトにあーんをする隙を与えることはなかった。
自分のペースで最高級の料理を食せたし、アデライーデとの会話も弾み、心もお腹も大満足だ。
食事の給仕もマテアスだけが務め、夕べのように入れ替わり立ち代わりでやってくる使用人たちの、なんとも生暖かい視線にさらされることもなかった。
ジークヴァルトは聞かれた質問に答えるくらいで晩餐中はほぼ無言だったが、マテアスは始終不満げな顔をアデライーデに向けていたので、もしもアデライーデが言い出さなかったら、昨夜の悲劇を繰り返す気満々だったのだろう。
そう思うとリーゼロッテはひたすらアデライーデに感謝の念を抱いた。
「どう? リーゼロッテは満足できた?」
「はい、どのお料理もおいしくて、少し食べ過ぎてしまいましたわ」
「リーゼロッテはもっと食べていいと思うけど」
リーゼロッテの小さな顎のラインを指先でくすぐりながら、アデライーデはちらりとジークヴァルトに視線を向けた。
(くくっ、睨んでる、睨んでるわ)