総長様の溺愛は、甘すぎます。
それに、大嫌いな女という生き物のはずなのに、こいつには、全く嫌悪感が感じられなかった…。

こんなやつもいるんだな。そう思った瞬間に女がまるで花が咲いたような笑顔で笑ったんだ。

「お大事に!」

って…

その裏表が感じられない、ただ純粋な笑顔に俺は……不覚にも、全部、可愛いと思ってしまった。

彼女は、その後すぐに立ち去ろうとして、俺は、とっさに

「名前は!」

と叫んでしまった。

俺の声に振り向いた彼女はさっきのような笑顔で

「ゆうかです!!」

なんて下の名前だけを言って、去っていった。



それが全ての始まりだった。
でも、まさかのことに俺は、目を見張った。
会うだけでも、そう言われて会った、許嫁の相手、そこには彼女が立っていたから…

「ゆうか…」

そう呼んだ俺に彼女は顔を固まらせた。

俺の事を覚えていないことは、そこですでに確信した。
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