悪魔の僕は天使の君に恋をする
終業式が終わり、夏休みが始まってしばらく経った。

怪我の影響で部活も無し。本当ならリラックスできる長期休暇なのだが、そうもいかなかった。
 
どこへ行くにもヨルがついてくるのだ。

ルナはヨルを連れたまま、スーパーに買い物に来ていた。  


「ルナ兄、オレそのニンジンって野菜嫌いなんだけど……」


「我慢しろよ。今日カレーだから」


「カレー!?やったー!」


無邪気に喜ぶ弟を見て、ルナも微笑んだ。


「あら、ルナ君とヨル君!」


名前を呼ばれて振り返ると、そこには菫が居た。


「あ、藤堂さん!こんな所に居るなんて珍しいね。どうしたの?」


「メイドと買い物に来ていましたの。はじめてのお使いですわ!」  


「そうなんだ。偉いね、藤堂さん」


「もう、褒めてもなにも出ませんわよ!」


褒められた菫は顔を赤くした。


「……ところで、もうすぐ花火大会ですわね」


「あ、そういえばそうだね!」


ヨルの来訪からバタバタしていてすっかり忘れていた。
 

「ルナ君と花火が見れるの、楽しみですわ」


うっとりと話す菫を見て、ヨルは手を挙げた。
  

「はい!花火大会って何?」


魔界には花火なんて無い。だからヨルは花火大会を知らなかった。


「花火大会を知らないんですの?」  


「ああ!ヨルこの前まで海外の親戚の家に居たから、花火大会見たことないんだ!」


首をかしげる菫に、ルナは慌てて誤魔化す。


「そうでしたの」


菫は納得したようだった。


「ヨル君、花火大会っていうのはね、夜空に光る花を打ち上げて、それをみんなで楽しむお祭りのことですわ」


「へぇ~」


「ヨル君も見に来ると良いですわ」


そう言って微笑む菫の手を、ヨルは力強く握った。


「うん!お嬢さんが行くならオレも行くよ!」


「こら、ヨル!」


ルナは慌ててヨルを菫から引き離した。全く、油断も隙も無い。


「…じゃあ、そろそろ僕達会計するよ。花火大会でね、藤堂さん」


「お嬢さん、また会おうね~!」


「ええ。またね、2人とも」


菫は手を振りながら目の前を去って行く2人の影を見ていた。


「花火大会…か」


菫の中にはある覚悟があった。


「今度の花火大会、絶対ルナ君に告白して見せますわ」  



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