悪魔の僕は天使の君に恋をする
舞台裏から出ると、涼介がルナに駆け寄ってきた。


「ルナ!王子様格好よかった!」


「ありがとう、涼介君……って、涼介君、走って大丈夫なの?」


「うん!最近どんどん病気が良くなってるんだ!」


「そっか……良かったね」

 
ルナは嬉しそうな涼介に微笑んだ。その様子を見て、ハルも優しく微笑む。


「ルナ、おつかれさま」


「ありがとう、ハル。……ボクの王子様、どうだった?」


「ふふ……すごく似合ってたよ」


そう言って笑うハルに、ルナは顔を赤くした。


「お、やっぱり来てたか」


景太と菫と百合も、こちらに向かって歩いてきた。


「花里君、白雪姫おつかれさま」


「おう。似合ってただろ」


「うん!すごくね」


ハルは可愛らしい姿の景太を思い出し、クスクスと笑った。


「ハル、お久しぶりですわ」


「菫!久しぶり」


「元気にしてらした?」


「うん。……あ」


ハルは何かを思い出したかのように、気まずい顔をした。


「菫、ちょっといいかな……?」 


ハルは菫を連れて少し離れた場所へ移動すると、頭を下げた。


「急にどうしたんですの?」


「ごめん……もう君のこと応援できない」


「え……?」


「ボクも、ルナが好きなんだ」


ハルは迷っていた。ルナが人間なら、同じく人間の菫と結ばれた方が幸せになれるのではないか、と。

しかし、ハルはルナの隣に居たかった。

限られた時間……天界に帰るまでの間でいいから、ルナに恋していたかった。


「そう、ですの……」


菫は少しの間言葉を失ったが、すぐに口を開いた。


「なら、ライバルですわね」


「え?」


「わたくし、負けませんわよ。ハル」


そう言って微笑む菫を見て、ハルは微笑み返した。


「……うん」


「お姉ちゃん、見つけた!」


遠くから駆けてきた涼介が、ハルに抱きついた。  


「ルナ、文化祭見て回るんだって。お姉ちゃん達も行こうよ!」


「……うん。分かった」


ハルは涼介に微笑んで頷いた。


「よし、行こうか」


ハルはルナ達が待っている方へ歩いて行った。







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