あわよくば、このまま

「板書お願いしてもいいか?」

教卓に着くと、小声で藤に尋ねられる。


それに頷くとさっきまで嫌そうにしていたのが嘘みたいに、はきはきと話し始めた。


「じゃあ今から種目について説明するので」


……こういうところが凄いんだよなぁ。

切り替えが早いというか、これだけで藤がいいやつだということがわかる。


種目名をひとつひとつ黒板に書きながら、後ろで藤が説明しているのに耳を傾ける。


「この種目は全員参加なので───」


低い声はすっと耳に馴染むし、説明だって丁寧でわかりやすい。




……こういうところもモテる要素の1つなんだろうなぁ。


っていやいや!!違うでしょ!!



ボキッ!


思わず指に力が入り、チョークが折れてしまった。

< 30 / 65 >

この作品をシェア

pagetop