あわよくば、このまま

「まじで楽しみにしてて!」
「ちょ、いきなり動かないでよ」


くるっとこっちを向いた寺田くんは里帆に注意されて慌てて前を向き直した。



本当にいつもと変わらなさすぎて、もう少し緊張感があったほうがいいのかな?と心配になる。

でもそんな不安も響いてきた笑い声にすぐにかき消された。


わちゃわちゃとした教室。

その中でもより一層騒がしいところに、笑い声の元凶である慎二先輩がいた。


採寸している相手は応援団長だ。


「採寸は慎二以外でって頼み損ねたな」
「俺直々だぞ。嬉しいだろ」
「嬉しくねー。あ、おい、ちゃんとしろって」
「とか言って〜お前も楽しんでるじゃん」
「うるせ。住野が来たら怒られんだろ」
「大丈夫大丈夫。まき、今日遅くなるらしいから」


ぎゃははと笑いながらじゃれあう先輩たち。


慎二先輩の大丈夫が大丈夫じゃなさそうだと思ってしまうのは、この前のアイス事件(と言うほどでもないけれど)のせいかもしれない。

だって、まき先輩に見つかって怒られる未来しか見えないもん。

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