恋愛計算は間違える(アルバートとテレーサ)
<ブランシュール城・土曜日・13時40分>

まったく、まったく・・
食わないからあんな風になってしまうんだ!!
飢え死にして、ミイラのように干からびるぞ・・・

アルはこみあげる怒りの感情で、
自分の家に戻っていった。

せっかくの美人がもったいない。
テレーサのいう修道院は
生きながら、(しかばね)
する場所なのか?

ミルクを温め、フレンチトーストを急いでつくった。
はちみつをたっぷりかける。

ああ、そうだ。
市場で果物を何か買っておけばよかった。
あと、メープルシロップも。
チーズはフレッシュのものがある。切っておこう。

アルは自分の台所で、手早く料理を始めた。

大きな銀のトレーに食事を乗せ、
足早に館に戻った。

テレーサはまだ温室にいた。
アルの姿を見て、緊張というか・・おびえているようにも見えた。

「さぁ、どうぞ」
アルはテーブルにトレーを乗せ、
テレーサを見た。

テレーサはアルの有無を言わせない口調に、不安そうな顔をした。

「・・ありがとうございます」

もう少し
優しく言うべきだったかもしれない・・
まだ子どもなのだから

アルは反省し、テレーサに笑顔を向けた。
「温かいうちに、召し上がってください」

テレーサはフォークを手に取ったが、戸惑うようにアルに聞いた。

「あなたはなぜ、出て行かないのですか?
ダイアナさんはすぐに出て行くと
言っていましたが」

それを聞いて、アルはテレーサの隣の椅子に座った。
「あなたの領主としての態度が・・気に入らないからです。
腹が立ちます」

テレーサの問いの答えではないが・・・・
アルは遠方の景色を見て言った。

「俺は・・
王族として生まれたから、
ガキの頃から帝王学を仕込まれました。

でも、自分は王としての器ではないと思っています。
弟の方が向いている。

その俺から見ても、あなたはまるで死んでいるようだ。
この領地や住んでいる領民に、
もっと責任を持つべきではないですか?」
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