恋愛計算は間違える(アルバートとテレーサ)
<ブランシュール城・台所・14時・ママレード作り>

ダイアナが、まずその提案に協力をしてくれた。

村のそれぞれの家でもママレードを作るが、
作り方や味もいろいろらしい。

ダイアナが
<ここの家のが、絶対においしい>と推薦してくれた老婆が、作り方を教えたくれた。

館の台所が
オレンジの香りで満ちてくる。

テレーサも白いエプロンをつけ、
オレンジの皮をむく作業に集中していた。

彼女にとっても、何か仕事があるほうがいいだろう・・
熱心に作業に取り組むテレーサを見て、アルは考えていた。

ブランシュール家の古いレシピ本を掘り起こすと、ママレードの作り方も記録されていた。

アルとテレーサはいくつかの作り方で試作をして、小さめのガラス瓶に詰めた。

テレーサが瓶に貼るラベルの文字を書いた。
それを見てアルは言った。

「美しい文字ですね」
「聖典の・・古い字体なのですが」
テレーサが控えめに答えた。
でも、少しうれしそうに見えた。

「神様の食べ物だから、いいと思います」
黄金の煌めく(きらめく)しずくは、神の恵みだ。

あの時の、
あの幸福な時間を取り戻したい・・
それがアルの本音だった。
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