おデブだった幼馴染に再会したら、イケメンになっちゃってた件
 カシスオレンジ風味のノンアルコールを口に含んだ頃には、風呂も入ってリラックスタイム。
 結局、から揚げをつまみに、ノンアルコールを飲んでる。テレビからは、お笑い芸人が何かやってうけてるようだけど、ただのBGMになってしまってる。
 こういう時は、スマホのゲームに没頭すべし!

 スマホを鞄から取り出すと、L〇NEのメッセージが五つもあることに驚く。

「げっ」

 それも久しぶりの遼ちゃんのメッセージ。

『美輪さん、今日、暇?』  19:00

『お仕事忙しいのかなぁ』  19:08

『僕、近くまで来てるんだけど』 20:20

『美輪さーん』 21:10

 号泣してる顔のアイコン 21:40

 うわぁぁぁぁ……なんというタイミングの悪さ。とりあえず、謝らなきゃ、と慌ててメッセージを打つ。

『ごめん、今、見た』

 送信した直後に『既読』がつく。
 は、早いっ!?

 ピンポーン

 スマホに集中してただけに、いきなり玄関のチャイムが鳴って、ドキッとする。
 な、なに、こんな時間に。それも、この音は玄関のところにあるチャイムの音。普通なら、まずはエントランスの別の音のチャイムが鳴るのに。

 恐る恐る近寄って、ドアスコープから覗いてみると……さっきのグレーのパーカーの男が立っている!?

 なんで? なんで? なんで?

 怖くなって、部屋の奥まで逃げ込んだ。

 ピンポーン、ピンポーン
 
 なんで? なんで? なんで?
 頭の上にはいくつものクエスチョンマークが浮かんでるに違いない。

 ヴルルルル ヴルルルル

 無意識に掴んでいたスマホが揺れた。
 L〇NEの無料通話がかかってきたみたいで、画面には『RYOTYAN』の文字。
 正直、天の助け!! と思った。

「も、もしもしっ?」
「『あ、美輪さーん? 開けて~?』」

 ……
 ……ん?
 なぜか、玄関先の声と重なってる気がするのは、気のせいだろうか?

「はい?」
「『はい? じゃなくてー、開けて~?』」

 遼ちゃんの甘えた声に脱力とともに、怒りがふつふつとわき上がってきた。
 あんなに恐かったのに。マジで怖かったのに。

「『ねっ?』」
「……やだ」
「『えぇぇぇぇぇっ』」
「うるさいっ」

 私は怒ってるんです! 終了。ぽち。

 ピンポーン、ピンポーン
 ピンポーン、ピンポーン
 ピンポーン、ピンポーン
 ピンポーン、ピンポーン
 ピンポーン、ピンポーン

 う、うるさいっ!!!!
 うるさい!!!
 うるさい!!!

 耐えられなかった私は、玄関まで行くとドアのチェーンをはずし、鍵をあけ、勢いよくドアを開くと、目の前にいるグレーのパーカー男を部屋に引きずり込んだ。

「う、うわあぁっ」

 ドテッと床に倒れ込んだのは、相模遼。
 ドアの鍵をかけて、見下ろす私は、たぶん、般若の面をかぶっていたに違いない。

「ひいっ」

 美しい遼ちゃんの顔が恐怖でひきつる。

「あんたねぇ……今、何時だと思ってんの……それも一人暮らしの女の部屋に」
「……ご、ごめん」

 私の涙は引っ込み、逆に遼ちゃんが涙目になる。

「だ、だって」
「だってじゃない」
「だって! 久しぶりのオフだったんだもん……み、美輪さんと、あ、会えないかなって思って……」

 かわいこぶってもダメです。

「で、ストーカーですか?」
「ス、ストーカーって」

 私の冷たい視線に、ぷるぷると顔をふる遼ちゃん。

「そ、そんなつもりは全然なくて……ただ……」

 その間は何。

「美輪さんを驚かせたかったんだもの」

 ……でた。妖艶王子の天使ヴァージョン。そんなかわいい顔で、上目遣いで目にお星さま入れ込んで、見つめないで。

「うっ」

 思わず尻込みしてしまう私。
 すーっと立ち上がる遼ちゃん。

「でね、仕事のスーツ姿もかっこいいなぁって思って、見てたら、声かけられなくて」

 ち、近寄るな。

「エレベーターでも、なんか小さくてかわいいし」

 な、なんだ、その獲物を狙うような目はっ!!!
 ジリジリ後退していくと、玄関のドアが背に当たってる。
 に、逃げられんっ。

「怖がってるのわかって」

 手、伸ばすな、手!!!

「かわいいなぁって思ったんだ」

 ふぎゅっ。
 簡単に抱え込まれる……むーん。子豚、捕獲されました。
 うにゅにゅにゅにゅ……。
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