おデブだった幼馴染に再会したら、イケメンになっちゃってた件
 慌ててバッグの中からスマホを取り出す。

『あ、わりぃ』

 そう言うとアリシアが、気にするな、と言う風に肩をすくめる。

「はい」
『あ、遼~?』
「一馬!」
『なんか、すげー着信あったみたいだけど、なんかあった~?』
「なんかって……なぁ、美輪と連絡とれないんだけど」
『あぁ? そりゃそうだろ。入院してたんだから』
「っな!? なんだよ、それっ! 聞いてないよ」
『言ってないもん』

 あっさり言う一馬に、思わず呆然とした。
 俺、一応、美輪の旦那だよな。身内、だよな。なんで、美輪が入院してるのに連絡とかしてこないんだよ。
 グルグル考えている間にも一馬が何か言ってるのに、耳に入ってこない。

『悪いんだけど、こっちも忙しいんだよ。なにせ、おじさん、おばさんがデレデレで、兄ちゃんもあの子のそばから離れないし』

 ……? あの子?

「は?」

 そういう一馬も、どことなく声のトーンが軽い。

『リョウ、大丈夫か?』

 目の前にはサングラスをはずし、きれいなエメラルドグリーンの瞳のアリシアが覗き込んでいた。
 うわっ、すげぇ綺麗な瞳《め》。

『美輪から連絡いってないから不安なのかもしれないけどさぁ、大丈夫だから。無事に、生まれたし』
「は?」

 一馬は何を言ってるんだ?

『悪いけど、そろそろ切るよ。画像、L〇NEで送るから』
「ちょっ、おい、まだ、話が」

 あっさり切りやがった。
 思わずスマホを睨みつけたが、ルンルンしてる一馬しか思い浮かばない。でも一馬が、深刻ぶってないってことは、そんなに心配しなくてもいいのか?

『カズマって誰?』

 すでにサングラスをかけていたアリシアが、楽しそう顔をして聞いてきた。

『ああ、俺の弟みたいな奴』
『へぇ。リョウに弟ねぇ』

 何、ニヤニヤしてるんだか。

『お、やべぇ、アリシア、時間っ!』

 慌てた俺たちは、話を途中にして走り出した。




 講義中も気になって、スマホをチェックしてしまう。そんな俺を、苦笑いしながら見るアリシア。
 しょうがねぇだろっ。一馬の話が中途半端すぎて、わけわかんねぇだから。
 今日、何度目かわからないため息をついて、前を向く。
 正直、頭に入ってこない。美輪のことばかり考えていて、こんな俺じゃ、美輪に怒られそうだけど。
 こんな俺にしたのは、美輪のせいだ。


 そんな中、L〇NEの着信でスマホが揺れる。講義中だから、机の下で画面を開く。相手は一馬。

『かわいいでしょ~』

 そんなメッセージとともに添付されてたのは、どう見ても猿。
 いや、生まれたての赤ん坊か。
 次に届いたメッセージには。


『母と娘』


 ベッドに横たわった髪が少し乱れた美輪と、その赤ん坊が一緒に写ってる!?

「っ! ええええっ!?」

 講義中だというのに、俺は大声で立ち上がってしまった。
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