婚約破棄されたので薬師になったら、公爵様の溺愛が待っていました
初めてオーレリアに苛立ちを感じた。けれどメイナードが結婚によりさらに不幸になるのはよいことだ。

「オーレリアが慈悲深いのは分かっているが、メイナードに情けはかけるな。名前も二度と口にするな」

オーレリアの体が強張った気がした。強く言いすぎたか。

「そうだ。婚約式は十日後に決まったぞ。婚儀は半年後だ」

「まあ! そんなに早く?」

彼女の表情がぱっと明るくなった。うまく気分を変えられたようだ。

「ああ、早く夫婦になりたいからな。多少無理を通してしまったが」

「嬉しい……半年後には正式に王太子妃になれるのですね。イライアス様ありがとうございます」

熱のある視線を向けられ、イライアスの機嫌はすっかりよくなった。

「婚儀が終わったら、イライアス様の王位継承も考えなくてはなりませんわね」

「即位しろと言うことか? それはまだ早いのではないか?」

思いがけないオーレリアの言葉に驚愕する。

「いいえ、国王王妃両陛下のお身体を思えば、出来るだけ早くイライアス様が公務を引き受けるべきですわ。それが親孝行というものですし、民も安心するはずです」

「親孝行……そうだな。国民を安心させる為に俺も覚悟を決めなくてはならないようだ」

義父母にも慈悲示す一方で国のことを考えるオーレリアの有能さに、イライアスは感心していた。すばらしい妃を選んだ自分を褒めてやりたい。なんて気分が良いのだろう。

不快な者のことなど忘れてしまおう。

これからはオーレリアとの日々が待っているのだ。

イライアスはオーレリアの顎に手を添えて、そのまま唇を貪った。
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