婚約破棄されたので薬師になったら、公爵様の溺愛が待っていました
アレクシアは驚き、ぴしりと固まった。まさかここで手痛い歓迎を受けるとは思っていなかったのだ。

「マナカさん、落ち着いて!」

「まずいって。奥方様、申し訳ありません」

騎士ふたりが慌てて彼女を止めに入る。公爵夫人に無礼を働いてはまずいと思ったのだろう。

アレクシアは心を落ち着けると、できるだけ穏やかに見えるように心がけながら口を開いた。

「マナカさんがおっしゃることは当然です。薬作りは軽い気持ちではできませんから。ですが私は祖母が薬師で幼い頃から教えを受けてきましたので、興味本位と言うわけではありません」

「……公爵夫人になるくらいだ。元々貴族令嬢だろ? その祖母の教えじゃたかが知れている」

「私の祖母は、リリー子爵家の女主人です」

「リリー子爵家?」

マナカの顔色が明らかに変わった。

「じゃ、じゃああの家、秘伝の薬の作り方を?」

リリー子爵家は錬金術師と薬師にとっては特別な存在で、誰もがその技術を学びたがる。

しかし弟子入りは狭き門で、誰もが学べるわけではない。

 それだけに憧れの存在とも言えた。

「へえ、だったら是非腕前を見てみたいね。早速なにか作ってくれないか?」

「はい、そこにある材料を使用してもいいですか?」

アレクシアは部屋の端の棚に置かれた素材に目を遣りながら問う。

「ああ、好きにしていいよ」

「では……」
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