恋歌-Renka-




テレビ局に着いた時には
既に生放送は終わっていて……





長い間……車の中から
様子を伺っていたが




花音らしき人が
出てくる事はなかった……





「間に合わなかったか……」





俺は落胆して呟く





「今………先輩が探してる人って」





不意に琴乃が口を開く
けれど視線は真っ直ぐ前を
向いたままで………




「もしかして、お昼に会ったあの女性ですか?」





「え?」





「確か花音さんって……言ってましたよね。テレビ局に来たのって………MWに出てた花音(Kanon)さんに会うためですよね?」





震える声で彼女が言う





「そうだよ……」





「先輩…私は………」




それまで真っ直ぐ前を
見据えていた彼女が
俺の方へ向いて
真剣な顔をする




でも、どこか泣きそうで……




「私は……出会った時から、ずっと先輩の事が好きなんですっ」





知ってたよ。
ずっと前から………




気づかないフリを
してたのは……





全て花音の為なんだ。





「ごめん」





でも、本当は
このまま花音が帰って
来なかったら………




お前と付き合うつもりでいたよ。





でも、花音は帰ってきてくれた
日本に………東京に。





「先輩…気づいてましたよね?私が言う前から……私の気持ちに。」





いきなりの言葉に
ドキンと心臓が跳ねる





琴乃は、俺が琴乃の
気持ちに気づいてて




知らないフリをしてきた
ことに気づいてたのか?





「い、いや……今、知った………」




あえて誤魔化しては
みたものの





全てお見通しのようで……





「嘘は止めてください。驚いてないのが動かぬ証拠です」





と言って悲しげに笑う。





やめてくれよそんな顔………





って俺がさせてるのか。
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