来世にご期待下さい!〜前世の許嫁が今世では私に冷たい…と思っていたのに、実は溺愛されていました!?〜
 出会った頃から無表情がデフォルトでつい“そちら”が普通であると思い込んでしまっていたが、彼女が考えた通り、本来の彼は先ほどのように顔を綻ばせたり一喜一憂する様子をあけすけに表に出す人間だった……と、聞いている。

 では、裕一郎にとっての『当たり前』を奪ったのはいったい誰なのか? 何が要因なのか?
 彼の笑顔を見てしまったが故に、答えの出ない疑問ばかりが恋幸の頭を埋め尽くしていく。

 すると、黙り込む彼女を見て裕一郎は何か思うところがあったらしく、「小日向さん」と一声かけてからセンターテーブルの上にあった眼鏡を手に取り、慣れた所作で掛け直しながら恋幸に目線を投げた。


「すみません。まさか、あの状況で香水の種類を聞かれるとは思わなかったので……つい」
「ゆうっ……く、倉本さんが謝る事なんて何も無いですよ! むしろ嬉しかったです!」
「嬉しい……?」
「はい」
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