空を舞う金魚
夜、ラインに新しいユーザーからのメッセージが届いていた。名前に見覚えがなくて、でも内容を確認しようと通知をタップする。そこには千秋の高校三年の時のクラス委員からのメッセージがつづられていた。

――『前略。突然失礼します。僕たちが桜ヶ丘高校を卒業して十年たちました。そこで、この秋の九月の十一日に桜ヶ丘高校二十三回生の同窓会を催すそうです。主催は第二十三代生徒会会長の渡瀬智樹くんと、副会長の植山遥さんです。出欠席は各クラスでまとめて二人に報告することになりましたので、出血のお返事をお知らせください。草々』

同窓会……。そんな華やかな場に、千秋みたいな目立たない人間が行っても疲れるだけだ。千秋は欠席する旨を短くしたためて返事を送る。直ぐには既読はつかなかった。きっとこのメッセージをクラスの人数分送っているのだろう。千秋は次のお知らせを待つ身でもないので、そのままスマホを閉じた。
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