初恋キャンディ〜one-way love〜
「りうが俺を見かけたその日、俺、中学最後の地区予選で負けたことが悔しくて、実は予選試合後の会場で、隠れて泣いてたんだよね。」

かいはゆっくり話しはじめた。私の知らなかった、あの日のもう一つの物語を。

「すげー心が折れそうになって、もうサッカーを辞めようとさえ思った。

俺には才能がないんだ、って…。

絶望の淵に追いやられていたとき、どこからともなく、優しい音色が聞こえたんだ。

それに惹かれるようにして辿り着いた空き教室。

そこには、悲しそうに、でも儚く優しい音を奏でる、一人の女の子の姿があった。

その子は何かを堪えるかように辛そうな表情をしていて、フルートを吹きながら涙を流していた。

それでも大切そうに音を奏でるその子に、俺は…勇気と希望をもらったんだ。

その日からずっと、頭の中でその子が離れなくて、、、

いつかもう一度逢いたいなって、ずっと思ってたんだ。で、その女の子こそ…」

彼はそこで一旦言葉を切ると、不意に私の腕をグイッと引いた。バランスを崩して前に倒れ、腕の中に飛び込んでしまう私。そんな私を、彼はギュッと抱きしめてきた。

「今ここにいるりうなんだよね」

そして一旦私を離すと、優しくはにかんでくる。至近距離で視線が交わりあう。

そこだけ時間が止まったみたいに、私たちは見つめ合った。

…というより、なにか見えない力に導かれるように、反らすことが出来なかった。

「…かい、好き」

ほとんど無意識のうちに、私の口からそんな言葉がこぼれる。

一瞬大きく目を見開いた彼だけど、次の瞬間、ふわっと優しく微笑んでこう言ってくれた。

「りう、俺もすき」

ドキドキとうるさい胸の鼓動。

キュッと胸が締め付けられるような甘酸っぱい感覚。

恥ずかしいけど、照れるけど…そのどれも、悪くないなって思う自分がいる。

そよそよと木漏れ日が気持ちいい夏の午後…私は、何よりも大切な存在と出逢った。

いつかのハナミズキの香りが、そよ風に乗って、ほのかに香ってきた気がした。 
《end》 

 






























































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