偽装結婚のはずが、天敵御曹司の身ごもり妻になりました

その後、震える指でなんとか記入を終え、いつ提出するかを話し合った。

櫂人さんは一刻も早く届け出をしたいと言い張るが、婚約パーティーの日までにお互いのスケジュールが合いそうにない。

その態度にむくりと小さな疑惑が顔を出す。


『もしかしてその人への想いが叶わないから、せめて外見だけでも似ている人との恋を成就したかったのかしら？　だとしたらお気の毒ね』


『櫂くんにとって本当に大切な女性はずっとたったひとりだけよ。その人以外は皆同じなの。私もあなたもね』


『櫂くんは使える駒は全部使う人なの。目的を遂げるために手段を選ばない』


ふと、あの日の上田さんの台詞が頭をよぎる。

彼を信じているが、やはりまだ完全には自信がもてない。

そもそも彼と出会って一カ月半くらいしか経っていない。

冷静に考えれば、結婚を決断するには短すぎる時間だ。


急ぐのは、提携話をまとめるため？　


婚約パーティーで体裁を整える必要があるから？


嫌な方向に考えたくないのに、醜い感情が顔を出す。