エリート獣医師の海知先生に恋をして
海知先生がリラックスしているならと、私もリラックスができる。
それって、いつも海知先生は私にリラックスさせてくれる雰囲気を、さりげなく作ってくれるから。
「深刻なのは最初だけ、すぐに忘れる。かと思えば、ふいに、また過去を思い出して怯える」
私のことを言い当てる、この人いったいなに者なの。
「終わった過去を怖がるより、先のことを考えた方が建設的なのに」
空を見上げて、独り言みたい。
「“やけどをした子は火を怖がる”って、英語のことわざがある」
海知先生の生まれ故郷のことわざかな。
「意味は、一度ひどい目に遭うと、二度と同じ目をくりかえさない。さらには、必要以上に注意深くなって、怖がらなくてもいいものでも避けようとする」
「やけどをした子って」
「そうだよ」
私か。
「みんながみんな、テンダーやマキオみたいな子ばかりじゃない。さっきの野良猫みたいな子も一定数いる」
「非常識なオーナーや、理不尽なクレイマーもです」
人間は嘘や欲望にまみれて、汚くて複雑で疲れるよ。
学生時代は気の合う人と過ごせたけれど、社会人になると、接する人を選べない。
合わない人とも、なるべく友好的な人間関係を築かないといけない。
まだ動物から噛まれたり、引っかかれたりする方がマシだよ。
「星川から恐怖心を取り除くために、俺がいるから安心しろ」
私には海知先生がいてくれるんだよ、元気出さなくちゃ。
縮こまっている心の芯が伸びた。
海知先生って、子どものころから見慣れた、いつも仰いでいた空みたい。気持ちが晴れ渡って爽快。
呼吸を忘れていたっけ? 大きく息を吸うと、気持ちが晴々した。
海知先生、私に自信をくれてありがとう。
「いつだって曇りのときこそ、太陽と虹を探すんだよ」
私の表情や返答で理解していることを感じたようで、いつもの太陽のような明るい笑顔を向けてくれる。
「ほら、あそこ」
海知先生が指さす方を見上げれば、薄曇りの中に太陽の日射しが見えた。
「あと、こことそっち」
自分の胸を人差し指で触れて、私の胸を指さす。
「俺が指さした先、そこが胸で合ってるんだよな? どこにあるんだか真っ平らで、腹部と区別がつかない」
「もう! 変態」
「成長したら出直せよ、出直せる可能性はゼロに等しいけどな」
「ひ、酷い」
唖然だよ、びっくりする、言うかな。
凄すぎて、凄い以外の言葉が見つからなきゃ腹も立ちやしない。
「その顔なんだよ、金魚みたいな口して」
隣で躍り上がるように膝頭を叩いて、笑い声を上げるから、私の眉間に寄ったしわが一気に吹き飛んで、つられて笑い転げた。
「外に連れ出してくださってありがとうございます、気持ちいいです」
「星川は、そうして笑ってろよ」
太陽みたいな笑顔と心に、私の満面の笑顔は溶けそう。
「不細工なんだから」
「酷い」
酷いのを通り越して、笑いが込み上げて吹き出した。
海知先生といられると、心から嬉しくてたまらない。
それって、いつも海知先生は私にリラックスさせてくれる雰囲気を、さりげなく作ってくれるから。
「深刻なのは最初だけ、すぐに忘れる。かと思えば、ふいに、また過去を思い出して怯える」
私のことを言い当てる、この人いったいなに者なの。
「終わった過去を怖がるより、先のことを考えた方が建設的なのに」
空を見上げて、独り言みたい。
「“やけどをした子は火を怖がる”って、英語のことわざがある」
海知先生の生まれ故郷のことわざかな。
「意味は、一度ひどい目に遭うと、二度と同じ目をくりかえさない。さらには、必要以上に注意深くなって、怖がらなくてもいいものでも避けようとする」
「やけどをした子って」
「そうだよ」
私か。
「みんながみんな、テンダーやマキオみたいな子ばかりじゃない。さっきの野良猫みたいな子も一定数いる」
「非常識なオーナーや、理不尽なクレイマーもです」
人間は嘘や欲望にまみれて、汚くて複雑で疲れるよ。
学生時代は気の合う人と過ごせたけれど、社会人になると、接する人を選べない。
合わない人とも、なるべく友好的な人間関係を築かないといけない。
まだ動物から噛まれたり、引っかかれたりする方がマシだよ。
「星川から恐怖心を取り除くために、俺がいるから安心しろ」
私には海知先生がいてくれるんだよ、元気出さなくちゃ。
縮こまっている心の芯が伸びた。
海知先生って、子どものころから見慣れた、いつも仰いでいた空みたい。気持ちが晴れ渡って爽快。
呼吸を忘れていたっけ? 大きく息を吸うと、気持ちが晴々した。
海知先生、私に自信をくれてありがとう。
「いつだって曇りのときこそ、太陽と虹を探すんだよ」
私の表情や返答で理解していることを感じたようで、いつもの太陽のような明るい笑顔を向けてくれる。
「ほら、あそこ」
海知先生が指さす方を見上げれば、薄曇りの中に太陽の日射しが見えた。
「あと、こことそっち」
自分の胸を人差し指で触れて、私の胸を指さす。
「俺が指さした先、そこが胸で合ってるんだよな? どこにあるんだか真っ平らで、腹部と区別がつかない」
「もう! 変態」
「成長したら出直せよ、出直せる可能性はゼロに等しいけどな」
「ひ、酷い」
唖然だよ、びっくりする、言うかな。
凄すぎて、凄い以外の言葉が見つからなきゃ腹も立ちやしない。
「その顔なんだよ、金魚みたいな口して」
隣で躍り上がるように膝頭を叩いて、笑い声を上げるから、私の眉間に寄ったしわが一気に吹き飛んで、つられて笑い転げた。
「外に連れ出してくださってありがとうございます、気持ちいいです」
「星川は、そうして笑ってろよ」
太陽みたいな笑顔と心に、私の満面の笑顔は溶けそう。
「不細工なんだから」
「酷い」
酷いのを通り越して、笑いが込み上げて吹き出した。
海知先生といられると、心から嬉しくてたまらない。