ふたりぼっちの孤城

不覚にも泣きそうになった。

また「山吹」と呼んでくれた。

私を頼ってきてくださった。

ずっと付き纏っていた脱力感や絶望感が霧散していく。

久々にまじまじと見る彼女は、以前よりも大人に近づいているような気がする。

シャンプーのいい匂いが鼻腔をくすぐった。

今にも泣きそうで目が潤んでいるし唇は血色のいい桃色で大変色気がある。とても綺麗だ。

それに反してルミさんをギュッと抱きしめ口元が隠しているところがまだあどけない。可愛い。

そんなアンバランスさに目を奪われた。

この時私は気づいた。

いや、気づいてしまった。


私が彼女に抱いているのは、紛れもなく恋情だということに。