ふたりぼっちの孤城
山吹と対等に話し合うためには、まず状況を咀嚼することから始めないといけない。


「どうか私の話を聞いてください!」


振り返ったら騙される。

多分わたしにとってはその方が幸せだ。

嫌な部分を見なくて済むのだから。

でもわたしはたとえ傷ついたとしても、山吹と同じ目線に立ちたい。

廊下を進み部屋に入ると、直ぐに扉を閉めた。


「お嬢様!!」


山吹の悲痛な声が扉越しに聞こえる。

普段冷静な山吹が取り乱してわたしの部屋の前にへばりつくなんて今まで無かった。

山吹を拒絶したのはこれで2回目、信頼関係が壊れかけるのは3回目。

山吹の声が聞こえないように布団に潜り込んだ。

山吹は一体いつあの女性と知り合ったのだろうか。

あの女性がどこかの令嬢な訳がないから社交界ではない。

それか、買い出しのときに知り合ったとか。でもそれだけで訳アリの関係になるだろうか。

そもそもそんな時間ないはずだ。

朝から晩まで山吹はわたしの為に働き続けてくれているから。

だから絶対ない。

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