学校の怪談
「君はもう自分のことをわかっていますよね?」


優しい声。


すべてを包み込んで浄化してくれそうな声色に、怜美はうっとりしてしまう。


けれど浩一は猫田さんの姿を見た瞬間警戒した表情を浮かべた。


かくりよの責任者だとすぐにわかったみたいだ。


「僕は戻りません」


そしてキッパリと言い切る。


「もしかして、かくりよが嫌なんですか?」


浩一は左右に首を振ってそれを否定する。


と、すると、残るはただひとつ。


「心残りがあるんですか?」


次の質問に浩一はうなづいた。


「聞かせてください。あなたの心残りを」


猫田さんはそう言い、ゆったりと花壇の端に腰を下ろしたのだった。
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