瞳の奥
蓮は私の言葉を聴くなり片手で抱き締めたまま、もう片方の手で携帯を触り始めた。

「もしもし、俺だ。」

どうやら電話し始めたようだ。
私は邪魔にならないように部屋から出ようと立ち上がろうと思ったが蓮の抱き締める手の力が強く、まるで行くなと言ってる感じがしたのでそのまま動けないでいる。

「はい。話してごらん。」

考え事をしていたので、蓮が急に携帯を渡してきた意図が解らず困惑していたら、

「電話出たら解るから。」

と言うので、おそるおそる電話の主に話始めた。

「もしもし。」

『久しぶりだね、麗奈。』

お兄ちゃんの声だ。何年ぶりに聞いただろうか。思わず涙が溢れてきたまま応えた。

「お兄ちゃん、なの?」

『そうだよ。ごめんねも連絡しなくて』

「どこで何やってたのよ。私ずっと心配してたんだよ。お父さんとお母さんも行方解らないって言って、生きてて良かったよ。。」

『麗奈、泣いてるのか?』

「泣いてなんか無いわよ、馬鹿。
ただ、昔閉じ込められて死にそうになってた時の夢を見ちゃったせいか、私もうすぐ死ぬかも知れないって思っただけで。」

その言葉で蓮は抱き締めたまま頬にキスをした。
そして、私から携帯を取ってスピーカーにした。
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