桜が舞い、君に出逢う。
音瀬那由多はふっと目を伏せた。

「じゃあ僕が今まで感じてきたものは、自分自身が作り出してきたものってこと?...ほんと、嫌になる。自分自身が、とても。」

「音瀬那由多」

椅子から立ち上がって、名前を呼んだ。

ふわりと抱き締めれば、

音瀬那由多の体がピクっと動いた。

「貴方は貴方のままでいい。自分を嫌になるのは、人間だから当たり前。多分私も、そうだと思う。いつまでたっても抜け出せないまま、あの頃と変わってない。...今までしてきたことを改めて、新しい自分として生きればいい。...決めるのは、あなた次第。」

「ありがとう...」

涙声が混ざった霞んだ声で、

音瀬那由多は私の肩に頭を押し付けた。

それが小さな子供みたいで、

無意識に頭を撫でていた。
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