桜が舞い、君に出逢う。
美緒ちゃんは圧倒されたような顔をして、諦めたような素振りで私を部屋の中に招いた。

美緒ちゃんの部屋は相変わらず面白い。

色んなアニメゲームのキャラクターがいたり、壁に貼られたりしている。

椅子に座った美緒ちゃんは、私をベッドに座らせるよう促せる。

はぁ、とひとつため息を置いて、美緒ちゃんは話し始めた。

「紬はさ、妖怪って信じる?」

(…え?)

妖怪?なんで急に?

「ごめん、素っ頓狂な話なのはわかってる。でも大事なんだ。」

『そ、そっか…。妖怪はあんまり良くわかんないかな。』

「うーん、例えば鬼とか河童とか雪女とか?」

それなら知ってるかもしれない。

鬼は角が生えてたりする化け物、なんてことを聞いたことがある。

「今のは結構メジャーな方なんだけど…“さとり”って知ってる?」

(さとり?)

聞いたことがないし、想像もできない。

「さとりっていう妖怪は心を読む妖怪。人の心を悟り語る妖怪。」

(…え、)

心を読む、妖怪?

ねぇ美緒ちゃん、嘘だよね。

私が思ってること、言わないよね。

「それでね、蓮くんは…蓮くんはその、さとり妖怪なの。だから紬の心を読んで会話をすることが出来た。」

(嫌っ、もう…聞きたくない!)
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