マリオネット★クライシス

「片っ端から……?」
「台本ナシで過ごしてみるのも、たまにはいいだろ?」


……ドキン。

“台本ナシ”――それはたぶん、アドリブ芝居って意味じゃないよね。
彼が求めてるのは、演じていない素のわたしだ。

でも……くどいようだけど、こっちは陰キャ女子だよ?
もし幻滅させちゃったら?

と、なおもしり込みしちゃうわたしを、「それに」って悪戯っぽい眼差しが覗き込んできた。

「言ったはずだけど? 楽しんでもらえるように頑張るのはオレの方って」

「え」

――ユウが心配する必要はない。むしろオレの方が、ユウに楽しんでもらえるように頑張らなきゃな。大事なもの、もらうんだし?

瞬く間に台詞を丸ごと思い出してしまい、ドッカンって顔が爆発するかと思った。

「顔が赤いよ、ユウ?」
「きき気のせいですっ」
「へぇ、熱い気がするけどなァ?」

揶揄うような指先に、むにっと掴まれるわたしの頬。
「お、変なカオ♪」
「ひどい(ひひょい)! やめて(ひゃめひぇ)ー」

アニメみたいな変な声になっちゃって、思わず吹き出しちゃった。

「もう一回やらせて?」
「絶対やだ! 無理!」

遠慮なく伸びてくる手をバシバシ叩き落して。
戦ってる風な自分がなんだかおかしくて、笑いが止まらない。


その時、ふと気づいたんだ。
彼と一緒にいると……いつもよりたくさん、笑ってるなって。

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