マリオネット★クライシス

ところが。

カフェを出て、作業したいという宇佐美を後部座席へ移し、自分が運転して車をコインパーキングに移動させ……それからまだ30分も経っていない。

そこで、高木からの全面降伏電話である。

一体この短時間で、何が起こったのだろう。
あの小心者をこうも簡単に翻意させるなんて。

(弱みでも見つけた? それにしたって、どんな早業よ)

おかしい。
鮮やかすぎる……


次第に潤子は、寒気を覚えた。
エンジンを切り、窓を開けているにもかかわらず、だ。

なにしろ、旧知の自分すら無理だったのだ。

あのライアン・リーという男が魔法使いではないというのなら……考えられる可能性は、たった一つであるように思えた。


つまり、彼本人、というよりはその後ろにある組織(・・)が、高木を動かすほどの影響力を持っている、と――


間違いなく、普通の興信所の類ではない。
さらに言えば、クリーンな団体ではない可能性だってあるかもしれない。


(今朝だって、ニュースで言ってたじゃないの。『背後に大きな組織が関わっている可能性も』ってやつよ。あれは、覚せい剤絡みだったかしら)

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