マリオネット★クライシス

《おいっ! それはこっちの情報が遅かったと言ってるのか!?》

気色ばむ何人かのメンバーにも同調することなく、スーツ姿の男は薄く笑った。

《ライアン、かばいたくなる気持ちはよくわかる。俺やお前にとって、ジェイは弟も同然の存在だからな。だが、余計な感情は目を曇らせるぞ》
<……あぁ、わかってるよ>
《ならいい。くれぐれも、これが総帥直々の最重要案件であることを忘れるなよ》

了解、とどこか気の乗らない返事を返し、ライアンと呼ばれた男は通信をオフにした。
インカムをむしり取り、重苦しい吐息をつく――と、そこへ。

「あのぅ……」

モニターをチェックしていた男の一人がおずおずと振り向き、日本語で尋ねた。

「どうして、報告しなかったんですか? 我々はもう、ターゲットを見つけていますよね?」

あぁ彼は英語ができるんだっけ。
面倒だな、とわずかに眉をひそめたがすぐに気を取り直し、宥めるように微笑んだ。

「まだいろいろと腑に落ちないことがあるからね」
「ですが――」


ピンポーン

不満げな声を遮って軽い音が響き、来訪者を告げた。
すぐに運転席と通話がつながり、運転手によって本人確認が行われたようだ。

それほど相手を待たせることもなく、カチャリと荷台のドアが開く。
ライアンはそちらへ、顔を向けた。

「お帰り、貴志(たかし)

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