元婚約者の弟から求婚されて非常に困っています


「……」

私のそんな様子を見て、バスティーユ公爵も口を閉ざした。

その時。

「エレノア!待ってくれ、まだ話は…」

屋敷の扉が勢いよく開き、焦ったような表情を浮かべたリアムが入ってくる。

「…リアム様」

彼の登場にその場の空気が凍りついた。

あらあら、またなんてタイミングで…。

と、思ったのも束の間、

バシッ

鈍い音が響く。

「…リアム・コックス。話は全てエレノア嬢から聞いたぞ…お前はなんて恥知らずなことを」

バスティーユ公爵は、息子のリアムの頬を殴りつけたのだ。

「…と、父さん」

信じられないといった表情で父親を見つめるリアム。

そんな打ちひしがれる彼に追い打ちをかけるように

「コックス公爵、今回のエレノアとの婚約はなかったことにしてもらう」

私の父、ビクター伯爵からも冷たい言葉を浴びせられる。


< 8 / 318 >

この作品をシェア

pagetop