大和の風を感じて2〜花の舞姫〜【大和3部作シリーズ第2弾】
「いや、悪い。別にたいした事じゃないんだ」

雄朝津間皇子(おあさづまのおうじ)は何とも言いにくそうな感じだった。
忍坂姫(おしさかのひめ)は納得していないが、ここで皇子と言い争いをするのも面倒だと思った。

そして先程房千嘉(ふちか)と話していた事を雄朝津間皇子にも伝えた。

「なる程ね。分かった。じゃあ、その件は宮に戻ってから考えるとするよ」

そう言って忍坂姫に馬に乗るよう催促した。それから2人は馬に乗った。

「じゃあ、宮に戻るよ」

雄朝津間皇子はそう言って馬を走らせた。


「でもなんで、そんな簡単に千佐名(ちさな)を好いてる男を見つけられたんだ」

雄朝津間皇子は馬を走らせている状態で、彼女に聞いた。房千嘉の事は皇子自身でも知らなかった事で、そんな人物に偶然会えるのも何とも不思議だった。

「えぇー房千嘉とはさっき偶然ぶつかって、荷物を慌てて拾っていたんですが。その時に日田戸祢(ひだとね)の娘の見舞いに行くと聞いてピンと来たんです」

とりあえず、鏡の事は伏せることにしたが、大方自分の言っている事も間違ってはいない。

「ふーん、そんな事もあるんだね。前回の七支刀(しちしとう)の時もそうだったけど、君は本当に凄いと思うよ」

皇子にそう言われ、流石にそれも全て鏡のお陰とは中々言えないと彼女は思った。

「でも、本当に上手くいくと良いですね。私が見た限りでも、その房千嘉って人は凄く真面目で誠実そうな人でした」

忍坂姫はそう雄朝津間皇子に言った。
あの鏡が見せてくれたので、きっと意味のある事なのだろうと思った。

「まぁ、こればかりは実際にやってみないと分からないけどね」

こうして、2人は宮に戻って行った。
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