聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったので、異世界でふわふわパンを焼こうと思います。
メルのメイドであるライラに案内されて彼女の部屋の前に着く。
「こちらがお嬢様のお部屋です」
「あ、ありがとうございます」
アルベルトは深呼吸をするとドアをトントントンとノックした。
「……アルベルトです」
そう名前を告げると、足音が近づいて「アルベルト、さん……?」と聞いたことのないか細い声がした。
「うん、そう! 前作ってくれたフレンチ、とーすとっていうの作ったんだ」
アルベルトがドアに向かって熱を込めた。
するとドアがゆっくり開く。みんなが声をかけてもダメだったのに何故だろう……そう思ったけど。
「……フレンチトースト、食べたい」
顔を出して小さな声でメルは言った――。