DAYS -静かに積み重ねた私たちの日々-



「今希が何を考えてるのか当ててみようか」



私と向かい合う形で西浦は私の左手に自分の右手を伸ばすと、指先に触れた。
久しぶりの感触に気持ちが揺れる。
あやとりの糸のように絡まる指先。胸に抱えた行き場のない想いが溢れそうに
なるのを私はこらえた。



「ユカ先輩とは1年前にケジメついてるよ。生意気にも俺が断ったんだよね」



私は滲んでくる涙が零れ落ちないように少し上を向いたり瞬きをする回数を
減らしたりしていた。そんな私の様子に気付いてるくせに、西浦は話を続けた。



「で、俺はね、これからも希ともっといろんなことしたいんだけどさ」



視線を一瞬下に向けたら目に溜まっていた涙がポトッと一滴西浦の手の上に
落ちた。いつのまにか西浦は両手で私の手に触れていた。それが合図となって、
西浦は私の手を引っ張って自分の胸に抱き寄せた。


「西浦、私ね」


友達でいようと思ったけど無理、西浦が私じゃない女の子と一緒にいるとこ
ろを見るとなんか嫌なの、これってたぶん嫉妬とか独占欲っていうヤツでしょ、
そんな自分はもっと嫌いで、それで…

時折鼻をすすりながら私は壊れたラジオのように喋り続けた。そんな私を止めた
のは、西浦の唇。
こんなときにも4度目のキスだ、なんて数えてる私って。
私の腰にまわしていた腕に力が入って、私たちの体はさらに密着する。



「怖いこと教えようか」



引かないで聞いてよ、俺さ。



「この手で希に触れるとき、友達として扱ったこと一度もないよ」





おでこをくっつけてしゃべる西浦の息がかかる。絡まった視線の先に待って
いたのは、今までで一番長いキス。





名残惜しそうに唇を離した後、5回目だ、と西浦がいった。そうだね、と
つい返事をしたら私もキスの数を数えていたということがばれてしまった。
なんだよ、俺たちおんなじこと考えてたんじゃん、と西浦にまたぎゅっと
抱きしめられた。





中学生活最後の帰り道、私たちは手を繋いで帰った。
空いてる手にはたくさんの花束と卒業証書。



「やっと希が俺だけのものになった」



西浦が独り言のようにそう呟いた。私たちは顔を見合わせて、柄でもなく
照れてしまった。
照れ隠しなのか西浦は私にチュッと軽くキスをした。(6回目!)


「よし、高等部行ったらベストカップル目指すぞ」


「え、何それ」


「毎年全校生徒の投票で選ばれるんだって、文化祭で」





それが現実になるのは、もうちょっと先の話。


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