コンチェルトⅡ ~沙織の章

その年の暮れは いつにも増して 賑やかだった。


クリスマスの前に 智之達の引越しは 終わった。


すぐ近くに 家族が揃った喜びは 格別だった。
 


子供達が 冬休みに なるまでの短い間 

沙織は お母様と一緒に 何度も 麻有子を訪ねた。


働き者の麻有子は いつも 楽しそうに 家事に励んでいた。
 

「お母様。クッキー焼いたので お茶にしませんか。」

朝の家事が 一段落すると 麻有子から 誘いの電話が入る。


麻有子は いつも 清潔に 部屋を整えて お母様と沙織を 迎えた。
 

「わあ、いい匂い。麻有ちゃん 朝から よく働くわね。」

甘い クッキーの香りは みんなを 幸せで 豊かな気持ちに してくれる。
 

「智之さんも 絵里ちゃん達も 幸せだわ。こんな素敵な ママがいて。」

沙織は 麻有子を見て 少し反省する。
 

「私 こんな風に 家のことするのが 夢だったの。」

麻有子は 少し 恥ずかしそうに言う。
 

「麻有ちゃんに お料理 教えてもらいたいわ 私。」

沙織が 真剣に言うと お母様は クスクス笑う。
 

「沙織ちゃんも ちゃんと 作っているから 大丈夫よ。」

と言いながら。


「でも 私の料理って 嫌々 作っている感じが しちゃうのよね。」

沙織が 正直に言うと お母様は 更に笑い
 
「そうだもの、仕方ないわ。」

と言った。
 

「もう。お母様。」

沙織が 頬を膨らますと 
 
「いいのよ そのくらいで。私も そうだもの。麻有ちゃんは 特別よ。」

と言って 優しい目を 沙織に 向けてくれる。
 










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