花よ咲け

「あの、お願いがあります!」


と言われ景浦さんに連れてこられたのは前に私が彼女を連れてきたセンター街だった。


「あの、日曜日に着る服を選んでもらえませんか?私、日向君の好みが分からなくて……。」



そっか……葵のために可愛い格好をしたいんだ。私なら葵の好みが分かると思ったんだ。私を利用…しようとしているんだ。





「……葵は、あまり派手な格好は好きじゃない。この間買ったような服を着るなら品があるようにしたほうがいい。」

「なるほど……お上品な感じがいいんですね。」

「上はこの辺のフリルが付いたのがいいと思う。下は膝丈くらいのスカート。着るならこの辺。試着室あるから着ておいで。見てあげるから。」
「はい!」






利用されているってわかっている。私が選んでも可愛いと言ってもらえるのは彼女だってわかっている。私には望みはないってわかっている。






でもなんでこんなにも彼女の背中を見るのは辛いのだろう。





そうか…私は受け入れきれてないんだ。頭では分かっているのに心のどこかでまだ葵を取り戻せると思っている。彼女から葵を奪えると思っている。

「こんな自分…最低……。」



零れ落ちそうになる涙を必死に抑える。こんな時昔だったら葵が慰めてくれたのに今はもう慰めてくれる人はいない。

「紫吹さん、着てみました!どうですか?」
「え、あ、いいんじゃない?似合ってるよ。」

「本当ですか!?やっぱり紫吹さんを頼って良かったです。」




「私で力になれたならよかったよ…。もう今日はさ、ここで解散してもいいかな…?私、他に寄るところあるんだ。」
「紫吹さん、用事があったんですか!?私の用事に付き合わせてしまってすみません……。」



「ううん、気にしないで。……日曜日、楽しめるといいね。」
「はい…!」







このまま景浦さんと一緒にいたらきっと私は壊れてしまう。そう思って彼女と別れた。こうなることは分かっていたはずなのに……葵に言われて覚悟はできていたのに……涙が止まらない。









日曜日なんて来なければいいのに……
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