捨てられ妻の私がエリート御曹司に甘く娶られるまで
そっと奏士さんの手をはずした。それから、顔をあげ彼を見つめ返す。

「何かあれば、どのみち醜聞です。三栖家もあなたも関わる必要はありません」
「それなら絶対に関わることになる。里花は俺の花嫁になるんだから」

私は困って首を振った。奏士さんの目は意志的で鋭い。

「冗談じゃないぞ。俺は子どもの頃から、里花を妻に迎えたいと思ってきた」
「……え?」
「アメリカへ行けと父親に言われたときに、まだ中学生の里花を約束で縛れないと思って諦めた。里花が結婚したと聞いたときは仕方ないと自分を納得させるのに必死だった。……こんな状況で俺が里花を諦められると思うか?」

思わぬ言葉に私は自分が首まで真っ赤になっているのがわかった。
全身が熱い。嘘みたいな告白をされている。

「奏士さん……そんなこと……駄目です」
「駄目じゃない。でも、おまえを困らせたくもない。覚えておいてくれ。里花を奪う覚悟は俺にある」

奏士さんは本気のようだ。私は慌ててソファから立ちあがった。このまま話していてはいけないと思った。
その私の腕を奏士さんがつかむ。

< 47 / 193 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop