捨てられ妻の私がエリート御曹司に甘く娶られるまで
ふたりは頭を下げて、慌てて仕事道具を片付け、場を辞していった。
お仕事の邪魔をしてしまった。さらには、お茶の準備でもしに行ったのだろうか。お構いなくと言えばよかった。

「里花、こっちに座って」

奏士さんに促されるまま、私はソファにかけた。ソファやテーブルひとつとっても洗練されたデザインだ。ここが奏士さんの新しいオフィス……。なんて素敵なんだろう。
だけど、アメリカのオフィスはどうなったのかしら。

「奏士さん……日本でも事務所を構えられたんですね」

ようやく言葉が出てきた。

「ああ、三栖のアメリカ拠点は、別な人間に任せて俺は日本に戻ってきたんだ。それで、このオフィスが俺の新しい会社。まだできたばかりだけどね。それに、当分はアメリカといったりきたりだよ」

そう言って微笑む奏士さんは変わらない笑顔だ。確か今年三十歳のはずだけど、私の憧れたあの頃の奏士さんのまま。

「里花、今度は俺に聞かせてくれ。新婚の若い女性が、夜たったひとりでホテルのラウンジにいた理由を」
「……それは」
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