捨てられ妻の私がエリート御曹司に甘く娶られるまで
決意を新たに、私は京太に会うため、アーバンコンチネンタルホテルにやってきた。京太と住んだマンションを出てひと月近くが経っている。

先に到着したのは私だ。席は取ってあるそうで、案内された窓辺の席で紅茶を飲んで待った。
緊張していた。最後に会ったときは、諍いをして別れた人だ。さらに、京太は奏士さんと私の関係を訴えるとまで言っている。
もちろん、ここに呼びだしたのが建設的な離婚の相談なら、京太はきっと目を覚ましてくれているのだ。いつまでも気持ちのない結婚生活を続ける無意味さから。
紅茶を一杯飲み終わる前に京太が姿を現した。

「里花」

せかせかと足早に近づいてくる姿は、これから腰を据えて話し合いといった様子ではない。何かあったのかしら。

「京太さん」
「すまないが、場所を移したい」
「あ、はい」

首をかしげる私に、京太はきょろきょろと辺りを見回して言う。

「ロビーで仕事の知り合いと会ってしまった。このラウンジを利用するかもしれない。混み合った話を聞かれたくないんだ」
「それなら……」

東京駅に近い立地だ。同じようにラウンジを利用できるホテルはいくつもある。名前を挙げようとしたら、手首を掴まれた。
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