不条理なわたしたち
「さっき検査薬で確かめたら、妊娠してたんです。これです」

私は鞄から証拠の検査薬を彼に見せた。
信じてもらえないかもしれないと思ったから。


余裕そうな微笑を浮かべていた彼はやはり固まってしまった。

そうなるに決まっている。
私でも未だに信じられないもの。

でも彼の反応を見たら私も心が決まった。
私の決断は間違っていないのだと。

私は鞄に検査薬を戻すと彼を見る。


「勝手に堕ろすことは出来ないと思って。でも大丈夫です。あとは自分でやりますから。お金も気にしないで下さい。貯金もありますし、全部私の責任ですから。では失礼します」


決めていた言葉を言い終えると私は席から立ち上がり、ぺこっと頭を下げる。

よし、帰ろう。

伝えたことにホッとして、出口に向かおうと蓮水さんの横を通ろうとした。

だが何故か左手を掴まれて、引き止められた。


「産んで欲しい」
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