不条理なわたしたち
「おはよう、葵ちゃん」

「!!」

微睡みの中、頬に触れる温かい感触と間近から聞こえてきた声に驚きすぎた私は目を全開にした。

目の前には片肘をつき、手の平に頬を乗せて私を見下ろしている眩いほどの笑顔の蓮水さん。

私はガバッと起き上がった。

辺りがいつの間にか明るい。
あの大きな蓮水さんの香りしかしないベッドの上に居る。

そうだ、昨日から蓮水さんの家に来ていたんだと状況を把握した。


「今日は有給とってね。産婦人科と保健所に一緒に行くよ。顔を洗っておいで。朝食を作るから食べよう」

そういえば、

「服が無い……」

「じゃあ、まずは君の家に行かないとね」

ニコニコの笑顔で言われた。

結局、蓮水さんの言う通りに進まされる。
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