ひねくれた気持ちの先に
話し始めはとても遅い。何に悩んでいるのか知らないが、返事にもだいぶ時間がかかる。
でも…

…コイツの困った顔、何だか悪くない……

そんな軽い気持ちで何日も、バイトで被った日の休憩中にミズキの相手をした。
そんな矢先だった。

「次春くん…あの……あ、あなたのことが…好き…です……付き合って…もらえませんか……?」

「……。」

顔には出さない。呆れた顔は。
しかし、ふと自分の中に芽生えた。

コイツの困りきって泣いた顔、見てみるのは悪くないかもしれない……

俺は少し困った表情を崩し、笑った。

「いいよ。」


ミズキは一番始めはあのとおり。
それなのに普段から自分に自信がないらしく、引っ込み思案でウジウジ悩む。泣く。
俺がおだててやったりすればパッと笑顔に変わる。

なぜ面倒なのに付き合い続けているのかというと単純に、こんなやつを、そのうち立ち直れなくなるほど泣かせてみたい、というのがあるからだ。
だいたい俺は他人自体が好きではない。
恋愛なんてもっともくだらない。

だからただの暇つぶし。
困った顔が見られればいい。コイツの困った顔は見飽きない。泣き顔はもっとだ。
そちらから付き合ってほしいと言ったのだから、せいぜい楽しませてもらうつもりだ。

誰がこんな奴、好きになんかなるか。
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