復讐日記
もう二度目を開けない
 ここ2、3年気管支に違和感があったので、勤務する病院の呼吸器腫瘍内科を受診した。
 CT画像の所見は肺過誤腫ではないかとの診断。12mm。これは大きくならない限り経過観察が通常。ところが、放射線診断専門医は、PET検査画像、腫瘍マーカー検査で更に悪性でない確信を強めたい、と言った。検査を受け、全く問題無しとの診断を受けた。
 でも…邪魔物は取っちゃいたい。今まで自分の周辺の邪魔者を排除して来たんだもの、自分自身の体の中の邪魔物なら余計にとっとと排除したい。
 それと、1つ実験してみたいことがあって。
 私の能力って自分自身に通用するのだろうかということ。人間は自分の意志で動いたり止まったり考えたり、するわけだけれど、私が自分以外の邪魔者の意識の中に入り込んで操作して来たことは、自分にも通用するのか、実験してみようと思う。
 成功すれば私はもう二度と目を開けないことになる。
 手術は1ヶ月後。
 
 術前検査が何件かあり、勤めている病院なので業務中に出来て助かった。
 血液検査も何の問題も無い。私って、健康なんだなー。なのに何故肺に過誤腫が? 謎。
 さて、今日は入院して硬膜外麻酔をし、明日の手術に備えることに。

 手術当日。
 内視鏡手術。病変を病理に回して悪性腫瘍でなければ4泊5日で退院。入院中に動けるようであれば業務遂行出来る。目が開けばね(笑)
 全身麻酔が注入される、眠くなる、1つ、2つ、3つ…意識が遠のいた。
 どこでどう息を引き取ることにしようか、今日までにシミュレーションしていたことを実行に移す。
 執刀医の手術ミスにならないようにしなきゃ。
 そうだな、術後麻酔が覚める前に突如肺塞栓を起こすなんてどう?
 今まで復讐した人間のことを考えてみた。
 まだまだお仕置きが必要な人はいっぱいいるのに、私が死んだら一体だれが後を継いでくれるだろう。あ、あの子が居るか。名前も知らない、どこに住んでいるかも知らない、小学生のあの子。あの子に任せよう。

 もし、私の実験が失敗して目が開いたらこれからも私の復讐は続く。 
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