奏でる愛は憎しみを超えて ~二度と顔を見せるなと言われたのに愛されています~


春名(はるな)梨音が暮らしているのは、恋人の間野(まの)奏のマンションだ。
正確には奏が所有している高級マンションの最上階。そこが、ふたりだけの世界だ。

高級感あふれるマホガニーの家具が並ぶリビング。
寝室も3部屋。ジャグジーのある浴室……若いふたりが住むにはかなり豪華な部屋だ。 

ここには、奏が梨音のために準備してくれたものばかりだ。
安らぐソファー、黒光りするグランドピアノ。どれも梨音が愛用している。

なによりこの部屋からの景色が梨音のお気に入りで、夜景はもちろん昇る朝日をベッドの上でふたりで堪能する。

ここは、梨音には贅沢すぎる愛の巣だ。

日比谷の街が一望できる高層マンションに住むのには理由があった。
奏の知人で、梨音が師事している作曲家もこの近くに住んでいるからだ。

梨音はピアニストを目指していたが、今は大学で作曲の勉強をしている。
奏は自分よりも、梨音の才能を最優先してすべてを決めてくれるのだ。


***


奏自身は父親の経営する間野コーポレーションで副社長として働いている。
彼の専門は不動産開発だが、会社の事業内容としては流通から建築事業まで幅広い。
近頃では郊外に住宅団地や商業施設を建設するなど新規事業にも積極的だ。

29歳の若さで副社長を任されるほどだから、奏は優秀だし仕事熱心だ。
たくさんの仕事を任されている彼は忙しい毎日を送っていた。

ギリギリまで頑張る彼にとって、唯一癒されるのが恋人の存在だった。
まさに、梨音を自分の城に囲い込むほどに。


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