奏でる愛は憎しみを超えて ~二度と顔を見せるなと言われたのに愛されています~

奏は家政婦を帰すと、急いで秘書の守屋を副社長室に呼んだ。

「会社を辞めた京太がどこにいるか調べてくれ」

守屋は怪訝な顔をしたが、すぐに部屋を出て行った。
義理とはいえ弟の居場所を秘書に探させるのはおかしい話だ。
だが、有能な秘書は何も聞かず「承知しました」とだけ言って、すぐに取り掛かったようだ。

一時間も経たないうちに、守屋は情報をつかんで奏のもとにやってきた。

「京太さんは、オーストラリアのブリスベーンにおられます」
「連絡はとれるだろうか?」

「不動産関係の会社を新しく立ち上げられたばかりのようです。会社の電話番号を調べます」

「わかった。この部屋から電話を架けてみてくれ」

ブリスベーンなら時差は一時間だ。
急いでデスクの上の仕事を片付けながら、奏は京太と連絡がとれるのを待った。

守屋が連絡すると、京太は会社には不在だったらしい。
だが居場所を聞き出せたようで、再度電話を架けている。

「副社長、ご本人と繋がりました」

守屋がすぐに受話器を奏に手渡してくれた。

「すまない。もしもし、京太か?」

外に出ているらしくノイズがあったが、京太のやや高い声が聞こえた。

『義兄さん?』


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