奏でる愛は憎しみを超えて ~二度と顔を見せるなと言われたのに愛されています~


京太は母親の再婚ために置いていかれ、間野家の養子になった。
就職先も自由に選べなかったとしたら、屈折した心の闇は想像以上に深かったのかも知れない。

『言っとくけど、僕は謝らないよ。彼女を信じなかったのは義兄さんだからね』

「京太」

『じゃあね』
「待て! あれから、梨音はどうしていた?」

『知らないよお~。僕は敦子さんに頼まれた通りやっただけ。小切手を渡してバイバイしたよ』

「そうか」

『ま、頑張ってね~』

電話はあっさり切られた。

梨音は、母が用意した小切手を捨てて出て行ったのだ。
マンションには服も靴もスマートフォンも現金も置いたままで、その身ひとつで出て行ったのだ。
苦い後悔とやりきれなさで、奏は押しつぶされそうだった。

「副社長……」

黙って成り行きを見守っていた守屋も、状況を察したのか沈痛な表情だ。

「守屋。無様なところを見せてしまったな」
「いえ」

奏は深いため息をついてから、重い口を開いた。

「俺はなんとしてでも、梨音を探し出す」

強く決意していても、奏の表情は暗かった。
梨音を見つけ出したからといって、自分を許してくれるかどうか分からないのだ。



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