奏でる愛は憎しみを超えて ~二度と顔を見せるなと言われたのに愛されています~


守屋はそれ以上は言葉が出なかった。
恵まれていると思っていた奏も、心の中では傷ついていたのだ。

「だが、違った」
「副社長、あまりご自分を責めない方がよろしいかと」

守屋からは、奏をいたわる気持ちが伝わってくる。

「俺の方が、こんな狭い世界で生きていかなくちゃならない俺の方が……」

奏は深く息を吐いた。

「梨音を必要としていたんだ。自分だけのために、梨音にそばにいて欲しかったんだ」

「副社長……」

守屋は奏が泣いているのかと思ったが、奏の表情は凪いでいた。

「今更だが、彼女こそが俺のインディケーター(方向指示器)だったんだ」

「そんな! 副社長は梨音さんを支えておられました!」

「俺は彼女がいないと、進む方向を間違えてばかりだろうな」

守屋の心からの叫びも、今の奏には届かない。




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