凄腕パイロットの極上愛で懐妊いたしました~臆病な彼女を溶かす溺愛初夜~
 そういえば、空港を出てから一度もスマートフォンを確認していない。その存在をすっかり忘れていたくらいに。

 朱莉ちゃんに指摘されたように、ここ最近はスマートフォンを肌身離さず持ち歩いている。

 ……よくない傾向だというのは、彼と連絡先を交換した翌日から気づいていた。ただ見て見ぬふりをしていただけ。

 私はまた恋愛をして、椎名さんを中心に生活を送り、他事が疎かになるような事態を招くのだろうか。

 怖い。自分が壊れるのが怖くてたまらない。

「近くに雑木林があるのか。どうりで蝉が騒がしいわけだ」

 ひとり言なのか、椎名さんは遠くを見やりながらつぶやく。

 うだるような暑さの中、額に薄っすら汗を滲ませる横顔を、蝉の大合唱をどこか遠くに聞きながら眺めた。


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