凄腕パイロットの極上愛で懐妊いたしました~臆病な彼女を溶かす溺愛初夜~
 颯爽と歩くパイロットふたりはとにかく目立っていて、私たち空港関係者だけでなく近くにいる人々の視線も集めている。

 そんな注目の的である虹輝さんが私の前で歩みを止めた。

「行ってくる」

 表情をやわらかくした彼の言動に、隣にいるコーパイの紺野さんが目を剥いている。

 私も突然の出来事にさすがに動揺が走り口をパクパクさせた。

「お気をつけて」

 隣から元気な声が飛ぶ。朱莉ちゃんだ。彼女の声につられて私も頭を下げて挨拶をする。

「行ってらっしゃい」

 返事に満足したらしい虹輝さんは優しく微笑み、いつもと変わりなく優雅な足取りで場を立ち去る。

 CAたちからは声が上がらなかったけれど、ただならぬ気配がひしひしと伝わってきた。

「椎名さんはオープンにするつもりみたいですね」

「そう、だね」

 まだ動悸がしている胸を落ち着かせようと深呼吸をして、仕事に意識を集中させた。

 昨日は英会話のレッスンがあるからと、お昼ご飯を揃って食べたあとに自宅へ送ってもらった。

 洗濯掃除自炊など、やるべきことをやり、色惚けせずにいられたと思う。

 ただ今日からはどうだろう。仕事に集中しているときはよかったけれど、更衣室で着替えを済ませた途端、ニューヨークからの連絡を待ちわびてスマートフォンを必要以上に確認してしまう。
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