凄腕パイロットの極上愛で懐妊いたしました~臆病な彼女を溶かす溺愛初夜~
 しかし母子家庭で育っているからこそ、将来子供に寂しい思いをさせてしまわないだろうかと心がモヤモヤする。

 私の父親はきちんと養育費を払っているので金銭面的にそこまで苦労はしなかったけれど、やはり頼れる人間がそばにいないので、なにかのトラブルに見舞われると途端に脆弱な部分が露わになったりした。

 熱を出しても母親は仕事を休めず家にひとり残されたし、運動会が雨天で日程変更になっても、母親は仕事の都合がつかず来られないときがあった。

 ひとりで育てるのは容易ではない。

 産むまでの問題もある。現在私たちが交際しているのは周知の事実。そこで私の妊娠が発覚したら、もちろん相手は虹輝さんだと皆思うだろう。

 付き合って間もないのに、避妊をせず行為に至ったふしだら者と揶揄されるかもしれない。

 そんなの仕事に真摯に取り組む虹輝さんには不名誉だ。

 貯金はあるので早々に退職しても生活はできるだろう。最悪、母親を頼る。

 でも私が仕事を辞めても、虹輝さんがずっと独身だったら皆は首を傾げる。

 なにが一番いい方法なのだろう。考えすぎて夜は眠れず、日中ぼんやりしているのを自覚している。

 飛行機へと向かう虹輝さんを見送りながら、なにも考えず好きという感情だけであの背中に抱きつけたらどんなに幸せか……と切なさで胸が張り裂けそうだった。
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